要支援・要介護の違い|要介護認定前に知っておきたい知識
今までの生活に不便さを感じた、家族の様子がなんだかおかしい。そう感じたことはありませんか?そんなとき、相談先ではまず要介護認定を受けることを勧められることになると思います。
高齢者が介護サービスを受けるためには、居住地の市区町村から要介護認定を受ける必要があります。要介護認定では、「自立」「要支援」「要介護」の8つの段階に分類されますが、「要支援」と「要介護」のどちらに認定されるのかによって、受けられる介護サービスの内容や負担額が大きく変わってきます。
今回はその要介護認定で分かる8つの段階と違いについて、詳しく説明していきたいと思います。
要介護認定基準とは
要介護認定は、介護の手間を表すものさしとしての時間である『要介護認定等基準時間』を基準にあてはめ、そこに認知症を加味して判定がでます。時間については、「要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成11年4月30日厚生省令第58号)」によって定められています。
①要介護認定等基準時間の分類
直接生活介助:入浴、排せつ、食事等の介護
間接生活介助:洗濯、掃除等の家事援助等
問題行動関連行為:徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
機能訓練関連行為:歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
医療関連行為:輸液の管理、褥瘡(じょくそう)の処置等の診療の補助
②各認定の審査判定基準
※要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令より一部抜粋
要支援1:要介護認定等基準時間が25分以上32分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態
要支援2:要支援状態の継続見込期間(法第七条に規定する期間をいう。)にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減又は悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、要介護認定等基準時間が32分以上50分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態
要介護1:要介護認定等基準時間が32分以上50分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態(次条第一項第二号に該当する状態を除く。)
要介護2:要介護認定等基準時間が50分以上70分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態
要介護3:要介護認定等基準時間が70分以上90分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態
要介護4:要介護認定等基準時間が90分以上110分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態
要介護5:要介護認定等基準時間が110分以上である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態
要介護認定で判定される8つの段階
①自立(非該当)
自立(非該当)とは、歩行や起き上がりなどの日常生活における基本動作を自分で行うができ、薬の内服や電話の利用などの動作を行うことができる状態のことです。『要介護等認定基準時間』が25分未満の場合に判定されます。
②要支援1~2
要支援1
排泄や食事はほぼ自立しているが、身の回りの世話の一部に見守りや手助けなどの介助を必要とし、適切にサービスを利用すれば要介護状態になることを防ぐことができる状態のことです。家事などの支援があれば、基本的に一人で生活ができます。
要支援2
要支援1と同様に、排泄や食事はほぼ自立しているが、身の回りの世話の一部に見守りや手助けなどの介助を必要とし、適切にサービスを利用すれば要介護状態になることを防ぐことができる状態のことです。基本的に一人で生活ができますが、立ち上がりや歩行の際にふらつく、身だしなみを一人で整えられない、入浴の際に背中が洗えないなど、要支援1に比べると支援を必要とする場面が多いのが特徴です。
③要介護1~5
要介護1
排泄や食事はほぼ自立しているが、身の回りの世話の一部に見守りや手助けなどの介助を必要としている状態のことです。基本的に一人で日常生活を送ることができますが、要支援2に比べると身体能力や認知機能の低下がみられることから、排泄や入浴時など日常的な見守りや介助が必要です。
要介護2
排泄や食事などは自分ではできるものの、生活全般に見守りや介助が必要な状態のことです。自力で立ち上がること、歩くことが困難で、爪切りや着替え等にも介助が必要です。薬の飲み忘れや食事をしたかを忘れてしまうなどの認知症の初期症状がみられることもあり、問題行動を起こしてしまうこともある。
要介護3
排泄や食事、着替えや歯磨き等の身の回りの世話など、日常生活において基本的にほぼ全面的な介助を必要とした状態のことです。移動時の動作や立位保持が困難、認知機能の低下などが見られ、対応が必要です。
要介護4
排泄や食事、入浴や着替えなど、すべてにおいて介助がなければ日常生活を送ることができない状態のことです。自力での移動や立位保持が難しく、介助が必要です。認知機能の低下がみられることから、諸症状への対応も必要になります。
介護5
会話などのコミュニケーションをとることが困難で、基本的に寝たきりの状態のことです。排泄や食事、移動、立位保持、寝返り等がほとんどできず、介助なしでは日常生活を送ることができません。問題行動や、全般的な認知機能の低下がみられることがあります。
要支援と要介護の違いについて
①要支援2と要介護1の違いとは
要支援2と要介護1の違いは2つあります。
まず1つめは認知機能の状態です。要支援2では認知機能に低下はみられず、適切にサービスを利用すれば、要介護状態になることを防ぐことができると考えられています。一方要介護1では、軽度の認知機能低下がみられることに加えて、要支援状態への回復が難しいと判断された場合に認定を受けることになります。認知機能の低下がみられるか、また回復が見込めるかによって、要支援2と要介護1のどちらになるのか決まることになります。
2つ目の違いは、6カ月程度以内に心身の状態に変化がみられるかどうかです。厚生労働省の定めた条件、『認知機能や思考・感情等の障害により予防給付等の利用に係る適切な理解が困難である場合(目安として認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上)』と、『短期間で心身の状態が変化することが予測され、それに伴い、要介護度の重度化も短期的に生ずるおそれが高く、概ね 6か月程度以内に要介護状態等の再評価が必要な場合』のうち、いずれも該当しない場合は要支援2、どちらか1つでも該当する場合は要介護1と認定されることになります。
②使えるサービス
要支援2と要介護1では、使えるサービスも異なります。
要支援2では、部分的な手助けによって介護予防と日常生活の自立を促すサービスが利用できるようになります。介護保険が適用される介護予防サービスでは、地域包括支援センターと契約することによって、サービスを利用することができるようになります。サービスの量は要介護1よりも少ないですが、訪問型サービスで週2回、通所型サービスで週2回等の制限がある中、サービスを組み合わせながら利用していくことになります。また、市区町村によるサービスである『介護予防日常生活支援総合事業(総合事業)』では、訪問型や通所型、生活支援などの自立を促すサービスを受けることができますが、市町村によってその内容が異なりますので、お住まいの市区町村窓口にて相談することをおすすめします。
一方、要介護1で受けられるサービスは、介護保険が提供される『介護サービス』です。介護サービスとは、利用者の希望や状態に合わせて、ケアマネジャーがケアプランを作成し、利用することができます。要支援2では利用のできなかった夜間対応型訪問看護や定期巡回・順次対応型訪問看護などのきめ細かいサービスを利用できるようになります。また、要介護1になると『介護老人保健施設』や『介護療養型医療施設』、『介護医療院』等の施設への入所が可能になることも大きな違いといえるでしょう。
③1カ月あたりの区分支給限度基準額
要支援と要介護では、必要とするサービスの時間(量)が異なるため、介護保険から支給される金額も異なります。限度額は毎月支給されますが、使わなかった分は翌月に繰り越すことはできません。限度額の中から、収入に応じて使用した金額の1~3割を利用者が負担することになりますが、限度額を超えてサービスを利用する場合は、超えてしまった分を利用者が100%負担することになるため、注意が必要です。また、おむつや食費、介護専用の寝具、衣類等は介護保険サービスの適応外となるため、例えばデイサービスを利用する場合は、介護サービスの利用料の自己負担分(1~3割)に加えて、食費等の実費を支払うことになります。
要介護度 | 区分支給限度基準額 |
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
※1単位=10円で計算(お住まいの地域によって異なります)
おわりに
要介護認定は専門家の判断によって8つの区分に認定されますが、認定ごとの違いを知ることによって、いざ介護が必要になった際に準備をスムーズに行うことができます。
生活に不安を感じたら、まずは市区町村の窓口か地域包括支援センターに相談をし、適切な認定をうけることとで介護の負担を減らしていけると良いですね。