グループホームとは?
認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は地域密着型サービスのひとつで、1997年に痴呆対応型共同生活援助事業として制度化されました。2000年の介護保険制度開始を機に年々増え、2020年10月1日時点で行われた厚生労働省の調査(令和2年介護サービス施設・事業所調査)によると、全国の事業所数は13,977となりました。
今回はそんな認知症高齢者グループホームの特徴や入居条件、サービス内容について、詳しく解説します。
グループホームとは?
認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは、老人福祉法第5条の2 第6項に定められた施設で、認知症の高齢者が家庭的で落ち着いた雰囲気の中で、利用者とスタッフが協働で食事の支度や洗濯、掃除などの日常生活を行いながら生活するための施設で、地域社会において自立した生活を営めるようにすることを目的としています。利用者は5~9人で、顔なじみを作ることによって認知症状が穏やかになり、本人の望む安定した生活を実現することができます。対象は原則施設の所在地の市町村に住んでいて、要支援2以上の認定を受けている認知症の診断を受けている高齢者になります。
グループホームの部屋のタイプは2種類
グループホームの部屋のタイプは、大きく分けて『ユニット型』と『サテライト型』の2種類があります。従来のユニット型に加え、2014年にサテライト型が新たに創設されました。
ユニット型
ユニットとはグループホームの定員を表す単位のことで、1ユニットは5~9人という少人数を構成して共同生活を行います。そのため、顔なじみの関係を築きやすいという点がユニット型の特徴といえますユニット数は1つの施設につき原則2ユニットまでと決められています。
認知症の方は、新しい環境に慣れたり人間関係を築くこと、新しいものを認識することが難しいと言われています。大人数に施設では、利用者や職員が目まぐるしく変わるため、認知症の方が落ち着いて生活をすることにあまり適していません。そのため、1ユニット最大9人という少人数で生活することによって、他の入居者や職員を認識することができ、お互いに理解することによって顔なじみの関係を築くことができるのです。
サテライト型
サテライト型グループホームは、本体住居とサテライト型住居で構成されています。サテライト型グループホームは単身での生活を送りたいと希望する方で、支援がない状態での一人暮らしに不安を感じている方におすすめの施設で、本体住居から自動車等で20分以内の距離にあるアパートなどを利用しています。本人の希望に合わせて、食事やレクリエーション等を本体住居で行うこともできます。サテライト型で単身生活していて、困ったことがあれば担当の支援員に連絡することでいつでもサポートを受けられるという点が大きな特徴です。
認知症高齢者グループホームの入居条件
○65歳以上の方
○要支援2または要介護1以上の認定を受けた方
○医師に認知症の診断を受けた方
○集団生活を営むことに支障のない方
○施設と同一の市区町村に住民票がある方
グループホームに入居を希望する場合は、上記の条件を全て満たしていなければなりません。施設によってはさらに条件を付け加えている場合がありますので、問い合わせてみることをおすすめします。
他の施設と大きく異なる点は、『施設と同一の市区町村に住民票がある方』を対象としているところです。グループホームは地域密着型サービスなので、住み慣れた地域で生活するためにも、居住地を限定しているのです。
グループホームのサービス内容
グループホームでは、認知症の要介護者に対して、自立した日常生活を送れることを目標に、共同生活を通じて日常生活の援助と機能訓練を行っています。
生活援助・介護サービス
グループホームでは、認知症状を和らげることを目的に、認知症の専門知識を持った介護職員がより家庭に近い状況で見守りや介助を行っています。
【提供される生活援助と介護サービス】
○食事の提供
○掃除
○洗濯
○食事・排泄・入浴・着替えの介助
○レクリエーション
- 機能訓練(リハビリ)
- 買い物の代行援助
※●は施設によって異なる援助です
医療ケア
グループホームでは、人員基準に医師や看護師の設置義務がないため、原則的に医療面のケアは行っていません。なかには施設によって、訪問看護ステーション等の事業所との契約を行い定期的な健康管理を行っている、看護師が常駐しているなど、医療ケアも行っているグループホームもありますので、希望しているグループホームがある場合は確認が必要です。
グループホームは集団生活を営むことに支障のない方が対象となるため、もし入居者の体調が入居時よりも悪化し、医療的なサポートが必要になった場合は、医療機関への入院が必要となります。長期の入院となった場合や回復が見込めない場合は、退去しなければいけないこともあるので、注意が必要です。
グループホームの費用
入居にかかる費用は、グループホームを運営している社会福祉法人や企業によって異なりますが、初期費用として『入居一時金』や『補償金』が必要となります。また、毎月かかる費用として、『月額賃料』と『介護保険料』、水道光熱費や日用品、食費などの『雑費』があります。ひと月にかかる費用の目安としては15~20万程度ですが、都市部などではプラス5~10万かかるところもあります。
各項目の詳しい内容は以下のとおりです。
入居一時金
入居一時金とは、グループホームを利用する権利を得るための費用のことです。入居一時金は償却期間と償却率が施設ごとに定められており、期間内に退去した場合は償却率を基に計算した金額を返還金として受け取ることができます。この償却期間と償却率に関しては、国が定めた基準がないため、事業所ごとに大きく異なることが特徴です。
初期費用として、入居一時金か補償金のどちらかを払う必要があります。初期費用は事業所によって大きく異なり10~数百万と差がありますが、おおむね100万円以内の初期費用を設定しているグループホームがほとんどです。
保証金
保証金と、一般的なアパートなどを借りる際の敷金と同じものです。何事もなければ基本的に返却される費用ですが、退去時の居室内のクリーニングの修繕にも使用されます。万が一月額賃料などの支払いが滞った場合はは、補償金を滞納分あてることもあります。
月額賃料
月額賃料は一般的な家賃のことで、月々決まった金額を施設に支払います。同じ施設内でも、居室の広さや条件などによって金額が変わるところもあります。
介護保険料
グループホームは介護保険の地域密着型サービスになるので、毎月要介護度によって決められた介護保険料を支払う必要があります。要介護度の他に、施設内のユニット数によっても金額は多少変動し、施設によってはサービス提供体制加算や認知症専門ケア加算などの加算がつくところもあります。
その他の費用
グループホームでは、一般的なアパートで暮らしと同様に、水道光熱費や消耗品などの日用品費、食費が必要になります。また、散髪代や本や新聞の購入費など、個人の嗜好品などについても全額自費での支払いになります。
介護職員の配置や施設管理費になどにあてる管理費・共益費が設定されているところが、一般のアパートでの暮らしとの違いになります。
おわりに
グループホームは、認知症の方が住み慣れた地域の中で、家族のような少人数で日常生活を送ることができる、大変魅力的な施設です。もともと住んでいた地域の施設になるため、入居後も友人や家族との交流を持つことができます。
専門的な認知症ケアを受けながら穏やかに生活したい方は、ぜひ選択肢の一つとしてグループホームを検討してみてはいかがでしょうか。