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2022.12.26 老人ホーム

どんなところがあるの? 高齢者向け施設の種類とその特徴について

自分や家族にもし介護が必要になった場合、あなたならどうしますか?自宅で暮らしていくのか、それとも高齢者向けの施設に入所するのか迷うと思います。
そこで今回は、高齢者向け施設にはどんな種類があるのか、入所対象やその特徴について施設別に詳しく見ていきたいと思います。

公的施設と民間施設の違いはなに?

老人ホームは、公的機関が運営する『公的施設』と、営利法人等が運営する『民間施設』の二つに分類することができます。

公的施設とは、その名のとおり国や地方自治体、社会福祉法人や医療法人などの公的な機関が運営している施設で、介護保険施設とも呼ばれています。公的施設には、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(通称:老健)、介護医療院、軽費老人ホーム、ケアハウスがあります。

公的施設は、介護度の高い高齢者や低所得者を支援することに重点を置いており、民間施設に比べて費用が安く設定されています。民間施設に比べてレクリエーションなどの娯楽は少ないですが、費用が抑えられるということもあり、とても人気が高く、居住地域によっては入居するまでの待機期間が長くなることもあります。

一方民間施設では、施設の設置主体が限定されておらず、企業や様々な法人が運営主体となることから、特色ある様々なサービスを受けることができます。公的施設に比べると費用がかかりますが、その分充実したレクリエーションなどの娯楽サービスを受けることができるため、QOLの高い生活を送ることができます。民間施設の種類としては、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、住宅型有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、サービス付き高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンションなどが挙げられます。

 

施設の種類について

【公的施設】

①特別養護老人ホーム

特別養護老人ホームとは、老人福祉法第20条の5に定められた施設で、施設サービス計画に基づいて入浴・排泄・食事等の介護や、日常生活の支援、療養上のお世話、機能訓練を受けながら生活を送る、要介護者高齢者のための施設です。通称『特養(とくよう)』と呼ばれています。対象者は原則として65歳以上または特定疾病が認められた40~64歳までの人で、介護保険の要介護認定において要介護3以上の認定を受けた人とされています。また要介護1・2であっても、認知症や知的・精神障害によって日常生活を送ることが困難な方、虐待や家族の支援が望めず地域での介護サービスの供給が不十分な方などであれば、特例として入居を認められる場合もあります。

入居の順番は申し込み順ではなく、介護度や家族状況による緊急度が点数化され、それをもとに毎月開かれる入居判定委員会において点数が高い順に入居することになります。

所得や資産に応じた負担軽減制度が設けられているため、地域によっては入居を希望する高齢者も多く、入居待機期間が数年と長くなる場合もあります。

 

②介護老人保健施設

介護老人保健施設とは、介護保険法第8条第28項に定められた施設で、施設サービス計画に基づいて、医学的な管理下のもと、看護師による健康管理、介護職員による入浴・排泄・食事等の介護や日常生活の支援、理学療法士等によるリハビリテーションや生活訓練を受け、居宅における生活への復帰を目指す施設です。退院後自宅での生活が難しい場合などに、介護老人保健施設において心身機能の回復を図り、在宅復帰を目指すための『中間施設』と位置付けられています。そのため長期間の利用は原則できず、およそ3カ月程度で在宅復帰を目指すことになります。通称『老健(ろうけん)』と呼ばれています。

対象者は65歳以上または特定疾病が認められた40~64歳までの人で、介護保険の要介護認定において要介護1以上の認定を受け、入院治療が必要なくリハビリテーションを必要とする人とされています。入所期間が短いため回転も速く、公的施設の中でも比較的早く入所することができます。

 

③介護医療院

介護医療院とは、2023年に廃止される介護療養型医療施設に代わる施設で、長期にわたり療養が必要である者に対して、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理や看護、医学的管理の下における介護や機能訓練、その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的としています。医療の必要な要介護高齢者のための長期療養施設であることから、終末期を支えることも重要な役割の一つとされています。

 

④軽費老人ホーム(A・B型)

軽費老人ホームとは、社会福祉法第65条及び老人福祉法第20条の6に定められた施設で、低所得高齢者に対して、無料または低額な料金で食事の提供などの日常生活に必要なサポートを提供することを目的としています。軽費老人ホームは3つの種別があり、食事を提供する『A型』、食事を提供しない『B型』、ケアハウスの『C型』に分けられます。対象は60歳以上の自立または要介護認定の要支援の人で、自立した生活に不安を感じている、身寄りがなく家族の支援が難しい人とされています。

軽費老人ホームは基本的に生活のサポートを役割としているため、介護が必要になった場合は、施設によって特別養護老人ホームや民間施設の介護付有料老人ホームへの切り替えも求められることがあります。

 

⑤ケアハウス(軽費老人ホームC型)

ケアハウスは軽費老人ホームC型とも呼ばれ、A型・B型と同様に自立した生活に不安を感じている低所得の高齢者に対して、生活のサポートを提供することを目的としています。ケアハウスの中でも自立した高齢者を対象とする『一般型』、介護を必要とする高齢者を対象とする『介護型』の2種類があり、入居条件は施設によって異なります。介護が必要となった場合、『一般型』のケアハウスでは退去しなくてはいけませんが、『介護型』の場合は要介護状態になっても住み続けることができます。ただし、初期費用や月額費用に大きく差があり、『介護型』の場合はかなりの高額となります。

 

【民間施設】

①介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)

介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームの一つで、都道府県から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設です。対象者は要介護の高齢者で、24時間体制でスタッフによる見守り、食事の提供や洗濯、通院の送迎などの生活支援サービスを受けることができます。見守りではなく介護が必要となった場合は、介護保険給付の対象となり、介護保険のサービスを受けることができます。特別養護老人ホームや介護老人保健施設に比べると費用負担は大きくなりますが、その分サークル活動や外出などのサービスが充実するため、入居前と変わらない自分らしい生活を送ることができるのも特徴です。自立・要支援対象の『混合型』と、要介護1以上が対象の『介護専用型』があるため、入居のタイミングを自分で決めることができます。ただし介護度や医療の依存度が上がり、施設での対応が難しくなった場合は、退去しなくてはいけなくなることもあります。

 

②住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、食事の提供や清掃、洗濯などの生活支援サービスに加え、緊急時対応などの健康管理サービス、レクリエーションや行事などのサービスを受けることができる施設です。要介護認定を受けていない高齢者から入所ができ、介護が必要になった場合は外部事業所による訪問介護(ヘルパー)やデイサービスなどの介護保険サービスを利用することができます。介護度による施設の利用制限はありませんが、介護度や医療の依存度が上がり、施設での対応が難しくなった場合は、退去しなくてはいけなくなることもあります。

特別養護老人ホームや介護老人保健施設に比べると費用負担が大きくなりますが、居室は個室が基本となり、施設によってはラウンジなど共有施設を充実させているところもあります。

 

③認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

認知症高齢者グループホームとは、老人福祉法第5条の2 第6項に定められた施設で、認知症の高齢者が家庭的で落ち着いた雰囲気の中で、利用者とスタッフが協働で食事の支度や洗濯、掃除などの日常生活を行いながら生活するための施設で、地域社会において自立した生活を営めるようにすることを目的としています。利用者は5~9人で、顔なじみを作ることによって認知症状が穏やかになり、本人の望む安定した生活を実現することができます。対象は原則施設の所在地の市町村に住んでいて、要支援2以上の認定を受けている認知症の診断を受けている高齢者になります。

 

④サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者住まい法第5条に定められた施設で、介護・医療と連携しながら高齢者の安心を支えるサービスを提供する、高齢者専用のバリアフリー構造の賃貸住宅のことです。通称『サ高住(さこじゅう)』と呼ばれています。

サービス付き高齢者向け住宅では、安否確認と生活相談サービスの提供が義務付けられており、食事の提供も受けることができます。契約は一般のアパートと同様で、建物賃貸借契約になります。60歳以上の高齢者または特定疾病が認められて要介護認定を受けた40~64歳までの人が入居することができ、一般のアパートのように高齢や疾病を理由に入居を断られることもありません。介護が必要になった場合は、外部事業所による訪問介護(ヘルパー)やデイサービスなどの介護保険サービスを利用することができるので、安心して生活することができます。

 

⑤シニア向け分譲マンション

シニア向け分譲マンションとは、高齢者が暮らしやすいように配慮されたバリアフリー化された分譲マンションで、充実した生活支援を受けることができます。富裕層を入居対象としていることが多いため、マンションによってはフィットネスジムやシアタールーム、温泉やプールなど多種多様な共有設備がある場合もあります。

分譲マンションを購入する形になるため、購入後は自己資産として売却や賃貸、子どもに相続させることもできます。

 

おわりに

いかがでしたか?

費用が安い公的施設と、費用が高くなる分生活が充実する民間施設、どちらがいいのか迷うと思います。施設選びに正解はありませんので、その特徴や目的を事前にしっかりと調べ、ぜひ自分や家族に合った施設を探してみてください。