コラム

コラム一覧

2022.12.28 認知症

認知症について徹底解説! 認知症の種類や予防策について

かつては痴呆と呼ばれていた認知症について、みなさんはどのくらい知っていますか?

認知症は全てを忘れてしまう怖い病気、と思っている方も多いのではないでしょうか。

もし自分や家族が認知症になってしまった場合に、いち早く気が付くことができるように、認知症の種類や予防策について詳しく解説していきたいと思います。

 

 

認知症とは、正常な日常生活が送れない状態のことです

そもそも認知症とは、脳の病気や障害などの様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般や社会生活に支障が出てくる状態のことをいいます。本人に自覚がない場合が多いですが、進行性のため少しずつ日常生活に支障をきたします。認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や症状が異なります。

認知症の症状としては、記憶障害や見当識障害、理解力・判断力の低下などの中核症状と、行動・心理症状に大きく分けることができます。中核症状の例としては、①同じことを何度も言ったり聞いたりする(記憶障害)、②時間や場所が分からなくなる、③今までできていた家事や身の回りのことができなくなる、④理解力・判断力が低下する、等の症状があげられます。もの忘れであればヒントを与えることで思い出すことができますが、認知症は違います。ヒントを与えても思い出すことができません。例えば朝ごはんについて、食べたメニューを思い出せないのは『もの忘れ』で、食べたこと自体を忘れてしまうのが『認知症』でです。また、本人に『忘れていることに自覚がない』ことも認知症の特徴の一つといえます。

行動・心理症状としては、憂鬱で落ち込んだり、イライラ、性格が変わったように怒りっぽくなったりすることが挙げられます。

 

 

認知症の種類

①アルツハイマー型認知症

現在日本では、認知症の中でも『アルツハイマー型認知症』が最も多いといわれています。アルツハイマー型認知症は脳の神経細胞が少しずつ減っていく進行性の病気で、症状が出始める20年以上前から、脳の中では異常なたんぱく質(アミロイドβ)の蓄積と過剰にリン酸化されたタウ蛋白の蓄積(神経原線維変化)といった変化が始まっていると言われています。それによって脳が少しずつ萎縮し、様々な症状が出てくるのです。症状の現れ方や進行速度は、比較的ゆっくり進行して一人暮らしを継続できる方、発症してあっという間に症状が進み寝たきりになってしまう方など、個人差があります。

 

【原因】

アルツハイマー型認知症の最大の原因は加齢と言われていますが、脳の萎縮に繋がる異常なたんぱく質(アミロイドβ)は高血圧や脂質異常症、糖尿病などの基礎疾患があるとたまりやすくなると言われています。日本国内の疫学調査では、糖尿病の人のほうが健康な人に比べてアルツハイマー型認知症を発症するリスクが2.1倍になることが報告されています。また、歯周病やストレス、寝不足などもアルツハイマー型認知症の発症に関連があると言われています。

 

【アルツハイマー型認知症の症状】

アルツハイマー型認知症は、症状が徐々に進んでいくことが特徴とされています。

 

初期症状

初期症状は、常に探し物をするなどの行動が増え、人や物の名前を思い出せないなどの言語に関する記憶の喪失が特徴です。その他にも、ものを盗られたなどの被害妄想や、日にちや時間の把握ができない、料理など段取りしながら動くようなことができなくなるなどの症状も現れてきます。初期症状の段階では、老化現象と捉えられることも多く、症状が現れつつも身辺の自立は可能です。

 

中期症状

中期症状まで進むと、初期症状に比べて介助が必要になることも多くなってきます。例えば、住み慣れた近所でも迷子になってしまう、季節にあった服を選ぶことができない、服を着るなどの動作ができなくなる、古い記憶まで忘れてしまう、徘徊・失語などの症状が現れてきます。迷子や徘徊など、危険な行動が増えてくるため、目を離すことができなくなってくるのが中期症状の頃だと言われています。

 

後期症状

後期症状になると、脳へのダメージが広がるためより手厚い介護が必要となってきます。肉親の顔すら忘れてしまったり、失禁を繰り返す、排泄物を壁に擦り付ける、食べてはいけないもの(洗剤など)を食べてしまうなどの症状が現れてきます。表情の喪失や嚥下機能の低下による肺炎などを引き起こし、終末期となることもあります。

 

 

②脳血管型認知症

脳血管認知症は、脳の血管障害(脳梗塞・脳出血)によって引き起こされる認知症のことをいいます。アルツハイマー型認知症についで2番目に多い認知症で、認知症全体の約20~30%を占めており、女性よりも男性の方が多く発症しています。ただ、近年は脳の血管障害に対する治療法が進んできたこともあり、年々脳血管型認知症は減少傾向にあると言われています。

 

【原因】

脳血管型認知症は脳梗塞や脳出血によって引き起こされますが、脳梗塞や脳出血によってその周りの神経細胞がダメージを受けてしまいます。それによって酸素や栄養を運ぶ血管が阻害され、その先の脳細胞が死滅してしまうことにより、様々な症状が現れてきます。その中の一つが脳血管型認知症と言われています。

脳梗塞や脳出血の大きさによって急激に認知症が発症・進行する方もいますが、小さな脳梗塞や脳出血を頻繁に繰り返すことによって徐々に進行していく方もいます。

 

【脳血管型認知症の症状】

脳血管型認知症は、脳血管に障害を受けていない正常な部分の機能は保たれることから、できることとできないことに大きな差が生じます。この状態を『まだら認知症』といいます。

例えば、一日の中で意識や反応に差が出てくる、一度忘れてしまった人や物の名前を次回には思い出す、特定の専門知識のみ維持されているなどの症状がみられることがあります。まだら認知症では、本人にできること・できないことの自覚がはっきりとあるため、深い悲しみを感じ、抑うつや強い怒りの感情に繋がり、感情のコントロールができなる(感情失禁)などの症状が現れるのも特徴です。

 

 

③レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、αシヌクレインというたんぱく質を核としたレビー小体という物質が脳幹や大脳皮質に溜まることによって発症します。運動機能をつかさどる脳幹に溜まることから、手の震えなどのパーキンソン病を伴うことが特徴です。

 

【レビー小体型認知症の症状】

幻視

実際にはないもの(人や動物等)を具体的に見える幻視が現れることが特徴です。大勢の人が睨みつけているなど恐ろしい幻覚も多く、精神状態に影響を与えることもあります。

 

パーキンソン病

手足が震える、こわばって歩きにくくなる、動作が緩慢になるなどの運動症状が生じます。

 

睡眠時の異常行動

眠りが浅いレム睡眠時に、怖い夢を見て叫んだり、突然暴れ出したりする症状が現れます。

 

認知機能の変動

時間帯や場所によって、意識がはっきりしている状態と判断力や理解力が低下している状態を交互に繰り返し、変動していくことがあります。

 

 

④前頭側頭型認知症(ピック病)

前頭側頭型認知症は、脳の一部である前頭葉と側頭葉前方の萎縮によって引き起こされる、神経変性による認知症の一つです。人格や感情等を司る前頭葉と記憶や聴覚等を司る側頭葉が委縮することにより、人格や性格に変化が現れることが特徴です。

 

【前頭側頭型認知症(ピック病)の症状】

前頭側頭型認知症では、他の認知症では見られない様々な症状が現れます。社会性が失われ、お店で万引きをする、信号を無視するなどの自分本位な行動が見られるようになります。また、同じ行動や言葉を繰り返す常同行動も特徴的な症状です。その他の症状として、食事や思考の変化、共感などの感情移入が難しくなる、言葉が出にくくなる失語、自発性の低下が現れることもあります。

その一方で、他の認知症に見られるもの忘れなどの認知機能の低下は、あまり目立つことはありません。

 

 

⑤若年性認知症

認知症は高齢者だけではなく、若い世代においても発症することがあります。65歳未満で発症する認知症のことを、若年性認知症といいます。原因や症状は高齢者の場合と同じですが、事故による頭部損傷によって認知症を発症することもあります。

若年性認知症は、年齢のこともあってうつ病などほかの病気に間違われることも多く、発症しても発見が遅れてしまうことが多いと言われています。家族や周りの人が気が付く症状として、もの忘れや行動・性格の変化、言語障害などがあります。そのような症状が現れた場合は、一度医療機関を受診することをおすすめします。

 

 

認知症は予防できる!

認知症は日頃から脳を良い状態に保つことで予防することができます。例えば、適度な運動をしながら他のことを考えることなど良いでしょう。

そこでおすすめなのは、家事をやることです。家事は様々なタスクを効率よくこなしていく必要があるため、脳のトレーニングには最適です。認知症予防には生活習慣を見直し高血圧や糖尿病などのリスクを減らすことも大切なので、まずは脳のトレーニングを兼ねて食事を作ることをしてみても良いでしょう。

規則正しい生活と適度な運動、人とのかかわり、そして病気の早期発見・治療をすることによって、認知症を予防することができると言われています。地域によっては認知症予防プログラムを実施している場合もあるので、積極的に参加をして、健康寿命を延ばすことができると良いですね。

 

おわりに

いかがでしたか?

認知症について詳しく見ていきましたが、一番大切なことはおかしいなと感じたら早めに医師に相談することです。まずはかかりつけ医に相談してみても良いでしょう。早めに相談することで、認知症状なのか、他の病気なのかを知ることができます。

認知症は本人だけではなく、周りの家族の生活にも大きく影響を及ぼします。お互いに疲弊する前に、早め早めの受診・相談をおすすめします。