コラム

コラム一覧

2023.01.04 特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム(特養)とは? 老健との違いや入居条件・待期期間などの特徴を解説

公的施設の1つである特別養護老人ホームは、費用が安いことからとても人気の施設です。

今回は、特別養護老人ホームについて、その種類や入所条件、そして比較されることの多い介護老人保健施設(老健)との違いについて、詳しく説明をしていきます。

 

 

特別養護老人ホームとは

特別養護老人ホームとは、老人福祉法第20条の5に定められた施設で、施設サービス計画に基づいて入浴・排泄・食事等の介護や、日常生活の支援、療養上のお世話、機能訓練を受けながら生活を送る、要介護者高齢者のための施設です。通称『特養(とくよう)』と呼ばれています。

 

 

特別養護老人ホームの種類

特別養護老人ホームは、『広域型特別養護老人ホーム』『地域密着型特別養護老人ホーム』『地域サポート型特別養護老人ホーム』の3つのタイプに分類することができます。

それぞれの特徴について、詳しくみていきましょう。

 

広域型特別養護老人ホーム

広域型特別養護老人ホームは、居住地に関わらず申し込みができる、定員30名以上の特別養護老人ホームです。一般的に特別養護老人ホームと呼ばれているものは、この『広域型養護老人ホーム』のことを指します。のちほど紹介をする他の特別養護老人ホームとは違い入居に関して居住地の制限がないため、例えば激戦区に住んでいる高齢者が、地方の待機者がほぼいない広域型の特別養護老人ホームに申し込むことができます。そのため、場所にこだわりがなければ、比較的早く入居することも可能です。

 

地域密着型特別養護老人ホーム

地域密着型特別養護老人ホームは、広域型特別養護老人ホームとは異なり、設置されている市区町村に住民票がある高齢者のみが申込することができる、定員29名以下の地域に根差した小規模の特別養護老人ホームです。2006年の介護保険法改正によって、地域密着型特別養護老人ホームは設置されましたが、入居者の居住地を限定することによって家族や地域との結びつきを重視していること、少人数制にすることにより家庭的な雰囲気の中で可能な限り自立した生活を送ることを特徴としています。この地域密着型特別養護老人ホームには、『サテライト型』と『単独型』という2つの形態があります。

 

①サテライト型

サテライト型とは、公共交通機関などを使って20分以内に行くことのできる本体施設(広域型特別養護老人ホーム等)をもつ特別養護老人ホームのことで、高齢者が住み慣れた地域で生活する機会を提供することを目的に設置されました。サテライト型は普及のために、通所の特別養護老人ホームで定められている様々な基準が緩和されていることが特徴です。例えば、人員配置基準で通常の特別養護老人ホームでは医師や介護支援専門員、生活相談員、ケアマネジャー、栄養士などの人員を配置することが決められていますが、サテライト型ではこれらの専門職を配置する義務はありません。看護職員も非常勤で良いなど、基準が緩和されています。また、設備に関しても簡易調理設備を設置することで調理室の代用とすることが認められています。

 

②単独型

単独型とは、サテライト型とは異なり広域型特別養護老人ホーム等の本体施設を持たない特別養護老人ホームのことです。人員配置基準や設備設置基準は一般的な特別養護老人ホームと同様ですが、小規模でかつ小員数というアットホームな雰囲気であることが特徴です。小規模な施設ですが、この単独型の場合はショートステイの受け入れが可能であったり、小規模多機能型介護やデイサービスを併設している場合が多い傾向にあります。

 

地域サポート型特別養護老人ホーム

地域サポート型特別養護老人ホームは、在宅介護を受けている高齢者が、住み慣れた家でできるだけ長く自立した生活を送ることができるように、生活援助員が24時間、年中無休で見守りや援助を行う特別養護老人ホームです。地域サポート型特別養護老人ホームは、施設によって利用できる居住地域に制限があるため、事前に対象地域であるか確認が必要です。また、地域サポート型特別養護老人ホームは全国的にも数が少なく、推進する自治体が少ないのが現状です。

地域サポート型特別養護老人ホームのサービス内容は、生活援助員による日中時間帯の訪問による見守りや、看護師による夜間時間帯の相談、緊急時の対応などがあります。

 

 

 

特別養護老人ホームの入所条件

特別養護老人ホームは、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える施設との機能に重点を置き、2015年4月から特別養護老人ホームの新規入居者を、原則要介護3以上の高齢者としました。また、要介護1・2の方についても、以下の条件に該当する場合は、市区町村の適切な関与のもと、特例的に入所することが可能です。

【 要介護1・2の特例的な入所が認められる要件(勘案事項) 】

※社保審-介護給付費分科会第183回(令和2年8月27日)資料より抜粋

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000663498.pdf

○認知症であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態。

○知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態。

○家族等による深刻な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態。

○単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により、家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が十分に認められないことにより、在宅生活が困難な状態。

 

 

特別養護老人ホームと介護老人保健施設の違いについて

特別養護老人ホームと介護老人保健施設(老健)の違いについてまとめました。

  特別養護老人ホーム 介護老人保健施設
役割 身体介護や生活支援を行いながら居住させる リハビリなどによる在宅復帰支援
入所条件 要介護3~5 要介護1~5
サービス 身体介護などの自立支援 リハビリおよび医療的ケア
居室タイプ(面積) 10.65㎡以上 8㎡以上
入居期間 終身にわたって入居が可能 原則として3か月
費用 入居一時金:なし

月額費用:8万〜13万円

入居一時金:なし

月額費用:9~20万円

医師配置 非常勤が多い 常勤
介護・看護職員 夜勤や当直に看護師を配置する施設は少ない 夜勤や当直に看護師を配置する施設も多い
待機者数 比較的多い(地域差あり) 少ない

 

 

特別養護老人ホームの入所待機期間を短くするためにしておきたいこと

特別養護老人ホームは公的機関ということで費用も安く、人気が高いこともあって入所待機期間が長期間になってしまうことも珍しくありません。

そこで、今回は入所待機期間を少しでも短くするためにしておきたいことについてご紹介します。

 

①特別養護老人ホームへの申し込みは1つに絞らない

特別養護老人ホームの申し込み数に、実は制限はありません。少しでも入所の確率を上げるためにも、複数の施設に申し込みをしておくことをおすすめします。特に待機者数が多い地域にお住まいの方は、積極的に申し込みを行いましょう。人気のエリアでは3施設ほど申し込みをする人が多いそうです。

複数の施設に申し込みをした場合は、入所が決まり次第、申し込みの取り下げ等を行う必要がありますので、申し込みをしたすべての施設へ忘れずに連絡をしましょう。

 

②人気の低いユニットタイプに絞る

特別養護老人ホームは『ユニット型個室』『ユニット型個室的多床室』『従来型個室』『多床室』の4つの居室タイプがありますが、『ユニット型個室』『ユニット型個室的多床室』の二つは費用が他の2つに比べると約2万5千~3万5千円ほど月額が高くなってしまうため、比較的人気がありません。できるだけ早く入居したい方で、費用が高くなることを許容できる場合は、こちらのタイプを申し込みすることをおすすめします。

 

③就職して介護の必要性をアピールする

入所待ちの優先順位を上げるために、家族が就職することもおすすめです。介護を担ってきた家族(専業主婦など)が就職した場合、在宅での介護が難しくなるため介護の必要性は高まると言えます。少しでも入所待ちの優先順位を上げるためにも、入所に向けて就職するということも一つの手だと言えます。

 

④希望する施設のサービスを利用して顔見知りになる

希望する施設に併設しているショートステイやデイサービスがある場合は、積極的に利用してみましょう。その施設の職員と顔見知りになることは、介護の必要性や緊急性をアピールする上で有効的です。サービスを利用することで費用はかかってしまいますが、入所審査に有利であるということを考えると利用する価値は十分にあると言えます。

 

⑤探す地域を広げてみる

全国的に人気の特別養護老人ホームですが、入所待機者の数は地域によって様々であるのが現状です。定員割れをしていたり、生活相談員が営業に回って入所者を集めている施設も存在しているので、人気のエリアにお住まいの方は近隣の地域まで探す範囲を広げてみるのもおすすめです。

 

 

おわりに

在宅での生活が難しくなった場合、選択の一つとして挙げられる特別養護老人ホームですが、比較的どの地域でも入所待機者数が多いのが現状です。

入所条件を満たす場合は、情報収集や施設への申し込みなど、早めに準備・行動ができると良いですね。