「折り紙」は、認知症対策に効果あり?
折り紙の意外な効果
楽しく認知症予防をしてみませんか?
折り紙と聞くと、幼い頃に折って遊んだことを思い出す方も多いと思います。
そんな折り紙に、実は認知症予防に効果があると期待されているということはご存知でしたか?実際に介護現場のレクリエーションとして、折り紙を採用する介護事業者はとても多いのです。
そこで今回は、折り紙が選ばれる理由と認知症予防の効果ついて、詳しくみていきたいと思います。
レクリエーションで折り紙が選ばれる理由
介護の事業所のレクリエーションでなぜ折り紙が選ばれるのでしょうか?その理由は4つ挙げられます。
①親しみのある遊びで受け入れられやすい
折り紙は、日本人であれば一度は子どもの頃に経験したことのある遊びだと思います。そのため、懐かしいと高齢者からも受け入れられることが多いため、レクリエーションとして取り入れている施設も多いと考えられます。また、折り方によって難易度も変えられるため、様々な方に対応しやすいというメリットがあります。
②準備や後片付けがほぼ必要ない
折り紙をレクレーションとして実施する場合、準備は折り紙さえ用意しておけばすぐに始めることができます。他の工作のように道具等を用意する必要はなく、作品を持って帰ってもらえば、後片付けもほぼありません。また、折り紙は怪我や破損の心配もないため、安全面からも選ばれることが多いです。
③手指の機能訓練や脳の活性化につながる
細かい作業が必要な折り紙は、高齢者の指先のコントロールを取り戻すリハビリの効果も期待できます。また、折り紙は脳の活性化を促し、前頭前野を鍛えることができます。リハビリと脳トレを兼ねていることから、多くの介護施設がレクリエーションとして折り紙を取り入れているのです。
④作品を完成させることで自己肯定感が高まる
折り紙は手順に沿って作品を完成させることから一人で作り上げたという達成感を得ることができます。自分の力で成し遂げることにより、自己肯定感も高まり、そこから成功体験を何度も積み重ねることによって大きな自信へとつながります。その後の行動においても積極的な取り組みを期待することができるというメリットもあります。
認知症予防にもなる折り紙
折り紙で立体物を制作する中で、空間的な位置関係を把握し完成品を想像しながら折っていくという作業は、脳の中でも特に前頭葉への働きかけが大きいということが近年研究によって明らかになりました。
また、折り紙は幼いころの経験を思い出しながら、周囲の人との会話を交えて製作していくため、認知症の心理療法で用いられる『回想法』に近いと言われています。折り紙という幼いころ遊んだ懐かしいツールを使うことによって、高齢者から昔の記憶を引き出し、人と関わりながら指先を使っていくことで前頭葉の活性化が促されるため、認知症予防につながっていくのです。
回想法とは
回想法とは、昔の懐かしい写真や音楽、昔使っていた馴染み深い家庭用品などを見たり、触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う手法で、1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラーによって提唱された認知症の方へのアプロ―チとして注目されている心理療法の一種です。
昔の思い出は、その人が今まで歩んできた人生そのものです。昔を懐かしんで話をしている時の高齢者の顔は、自然と穏やかな表情になっています。一緒に語り合う相手がいれば、嬉しいかったこと、苦労してきたこと、それを乗り越えてきたこと等も分かち合うこともでき、充実した時間を過ごすことができます。今までの自分の人生を振り返りながら人生を再確認し、それによって現在の自分も肯定的に受け入れやすくなるのです。
回想法の効果
認知症の症状の特徴として、直近の新しい記憶を保つことは困難だという点が挙げられますが、認知症の進行度によっては昔の記憶はそのまま残っているということは多々あります。昔のことを思い出して言葉にしたり、相手の話を聞いて刺激を受けたりすることで脳が活性化し、活動性・自発性・集中力の向上や自発語の増加が促され、認知症の進行の予防となります。昔の思い出という共通の話題を楽しむ仲間と過ごすことによって不安や孤独感が和らぎ、自分の話を聞いてもらえているという満足感も得られることから、高齢者に多いうつ症状の予防・改善にもなるとされています。
折り紙の効果
①完成形や過程を意識することによって空間認識能力をつけることができる
折り紙を折りながら、今折っている部分はどの部分になるのかなど、立体的な動きをイメージしていくことによって、空間を三次元的に捉える空間認識能力を刺激することにつながります。
②折り方のバリエーションで記憶力を鍛えることができる
折り紙で繰り返し作品を作っていくうちに、自然と折り方を覚えていき、それが記憶力を高めることにつながります。また、作品によっては同じ折り方から始まるものもあることから記憶同士が関わり合うことも多く、記憶力を鍛える効果も期待できます。
③集中力を保ち、リラックスにつながる
折り紙は基本的に両手を使い、細かい作業も多いことから集中力が必要になります。一見細かい作業がストレスにもなりそうですが、実は目の前の作業に集中することによってリラックスにもつながっていくのです。
④二重課題トレーニングとしても優れている
脳の認知機能が衰えてくると、2つ以上のことを同時にこなす二重課題が難しくなると言われています。
折り紙は、折り方のテキストを見て実際に手を動かしながら紙を折るという、二重課題のひとつでもあります。そのため、折り紙によって脳細胞を刺激し、認知機能の維持や改善も期待できます。
折り紙からより多くの刺激を受けるためには
①指先を意識して使いましょう
指先を使う作業は、脳細胞を広く刺激します。折り紙を折る際には、指先に力を入れることを意識してみましょう。
②少しずつ難易度を上げてみましょう
まずは簡単にできるもので、作ったことのある作品からはじめ、少しずつ難易度を上げていきましょう。レベルを上げて難しい作品にチャレンジし、苦労しながらも完成させた時の達成感は、脳への大きな刺激となります。
③完成した作品の活用を考えましょう
せっかく作った作品をそのままにしておくのはもったいないですよね。完成した作品を、どこに飾るのか、または誰かにあげるのかなどを考えるのも、社会性の向上に繋がります。社会活動の一環として、近くの子育て施設に寄付をするのも一つの方法です。
折り紙をきれいに折る簡単なコツ
説明書を見ているのに、なかなか綺麗に折ることができない、仕上がりがパッとしない、ということもあるかと思います。そこで、高齢者でも綺麗に折る簡単なコツをいくつかご紹介したいと思います。
①きちんとテーブルに置いて折る
折り紙を折る環境をまずは見直しましょう。空中や膝の上で折っていませんか?安定した場所で折らないと、どうしても折り紙がぐちゃぐちゃになってしまいます。折り紙を折る際は必ずテーブルの上など安定した場所に置いて、片方の手で紙を押さえながら丁寧に折るようにしましょう。
②折り目をきちんと付ける
折る順番が分かっているものには、必要な折り目を先に折っておくことによって重なる部分を綺麗に折ることができます。また、折った方向とは逆にもう一度折ることによって、より折り目を綺麗に仕上げることができます。焦らず丁寧に折り目を付けることが、上達への第一歩です。
③千代紙など柄物の折り紙を選ぶ
折り紙をする際に一番多く使われる用紙は一般的な単色の折り紙だと思います。それでも十分素敵に仕上がりますが、千代紙など柄物の折り紙を選んでみるのもおすすめです。柄物の折り紙で作るだけで、完成した時にとても華やかに見え、ワンランクアップした作品になることでしょう。
おわりに
いかがでしたか?
認知症の予防効果など、折り紙から得られるメリットはとても多いので、ぜひレクリエーションや趣味の一つとして、生活に取り入れてみてください。